[FLASH] 五年後の嗚咽
父の仕事の都合で五年ぶりに故郷に戻った僕。
思い出すのは昔良く一緒に遊んだ幼馴染の「稲子」のこと。
今でも僕は彼女のことが好きだった。
僕は稲子と同じ高校・クラスに編入する。
「稲子、彼氏いないぜ」
そんなクラスメートの冷やかしに無関心を装いながらも
心の中では安堵の一言だった。
稲子が僕に向ける昔と変わらぬ笑顔。
きっと彼女も僕のことを・・・
これからはまた昔のように、いやそれ以上の仲になれる・・・
そんなドラマじみた未来を夢みていたのは
僕だけだったんだろうか・・・
僕はあの日覗き見てしまう。
蒸し暑い夏の夕暮れどき、少し開いた窓から
一児の父である男に抱かれ、悶える稲子の姿を・・・
五年間美化してしまった稲子との思い出が
今、汚泥となって崩れ落ちていく・・・
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